草稿集

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旅行の感想とかいろいろ。

日本語習得者のための津軽弁入門

この記事はFUN Advent Calender 2017の21日目の記事です。
adventar.org

昨日の記事は、 yamakentoc.hatenablog.com でした。

自己紹介

Daisen(@_n_el)と申します。
(多分)日本で一意な本名なので、大体これで呼ばれたり。

CとかJavaとかアセンブリとかをやってきました。最近はAndroid+Kotlinの勉強。Pythonもやってみたいなと。
最近、-8℃の札幌で某アイドルのライブの物販待機列に2時間くらい並んだら、凍傷を起こしてしまったので療養中。

前置き

皆様、特に未来大生の方なら分かっていただけるかと思いますが、行き交う人々の会話やバス停の待ち時間、大学構内など...様々な場所で日本語と似ても似つかない、謎の言語での会話を耳にしたことはないでしょうか。
意味をなんとか取ろうとしても、単語に分解するのでさえ無意味にも思える発音と高速度で交わされる会話に、ほとほと困ってしまったという経験をした方もいるかもしれませんね。
この言語の主な特徴として、

  • 単に耳にしただけでは何を言っているのかわからないほど高度な暗号化
  • 文全体の5割以上を削減することのできる省略法の豊富さ

などが挙げられます。

この言語の名を津軽弁といいます。

そんな日本でも最上級に難解な津軽弁についてですが、歴史自体はそこまで深いものでもなく、江戸時代に大和言葉アイヌ語が交錯して生まれた方言。あくまで日本語がベースです。しかし、学習コストが非常に高いことは事実であり、いかにして学習をすればよいか分からないといった問題点が未だ残っています。

そこで、今回入門編として、津軽弁についての基礎知識と用法を軽くまとめていきたい。

用語の説明

この記事では、便宜上の都合で標準的な日本語を「標準語」と表記します。
また、津軽弁に関しては「言葉 - 読み(意味)」といった表記を行います。

よくある誤解

津軽弁はよく青森弁と言われることがあります。この言葉は、少しばかり良くない表現です。青森には大きく分けて、津軽弁、南部弁、下北弁の3種類の全く別の方言があるので、青森弁という言葉を青森県内で使うと、ものすご〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く嫌な顔されます。
詳しくは、弘前大学人文学部HPのこのページを参照してください。
※なお、青森市内において、津軽弁と南部弁が微妙に混ざった表現のことを青森弁とする人もいるという話もありますので一概に嫌な顔されるわけではないのであしからず。

イントネーション

津軽弁といっても、所詮は東北の一部の地域で話される方言。
なので、東北弁に大きく似たイントネーションがあります。
例えば、

  • 「イ」「ウ」の発音に区別がなく、中舌母音と呼ばれている中間の音になる。
  • 「エ」の発音は「イ」に近い発音となる。 例: 「煙突 - イントツ」
  • 「シ」と「ス」、「チ」と「ツ」、「ジ」と「ツ」 の発音に区別がない。 例: 「獅子(しし) - ス↑ス↓」「煤(すす) - ス↑ス↓」「寿司(すし) - スス↑」
  • 「カ行」と「タ行」は濁って、それぞれ「ガ行」と「ダ行」になる。 例: 「西瓜 - スイガ」「蜜柑 - ミガン」
  • 語中や語尾の「ザ行」「ダ行」「バ行」のに当たる音の直前に鼻音を伴う。
  • 「ッ」は省略され、詰まることが多い。

といった特徴があります。

会話例

津軽地方において最低限のコミュニケーションを取るための表現をいくつか紹介。

例:久しぶりに会う、仲の良い友人との会話

A.「うっす - うっす」
B.「おろぉ、すばらぐみね間にうっど変わってまっだな - あれ、しばらく(顔を)見ない間に(見かけが)すごく変わってしまったね。」
A.「んだべが? - そうかな?」
B.「んだよ。わらすのとぎだば、じゃんぼもしょっちゅかてまてねがったすよ、髭だんもぴっとすたったきゃな。 - 子供のことは、髪も頻繁に切ってたから短かったし、髭とかもしっかりしてたはずだったのに。(補足:非常に少ないものを「ない」とすることがある)」
A.「すたばってよ、じゃんぼはおがったばって、ぼのごだのもうっとおがてまてかぐさねばまねんずよ - しかし、髪は伸びても、おでこも広くなってしまって、隠さないとだめなんだよ。」
B.「んだんずな、なもふけでまだな。 - そうなんだ、お前も年を取ってしまったな。」
A.「へばまだ、くれのとぎさでものみさいぐべし。ぬぐだまるんたはなしっこ持ってきてけ - それではまた、年末にでもどこかに飲みに行こう。面白い話聞かせてくれ。」
B.「わがっだ、へばまだ - 分かった、それではまたね。」

新しい津軽弁

津軽弁は日々変化しています。ここ数十年でできた語もあるため、若者には通じても、そうでない人には通じない表現があったりします。
例えば、

  • 「がふぇ - ださい、ぼろい、かっこ悪い」
  • 「どすべ - どうしよう」
  • 「むっつい - 主に食品が口の中の水分を吸ってしまい、食品が飲み込めなくなってしまっている状態を指す」

とかがあります。詳しくは津軽弁:新しい津軽弁の例 - Wikipediaを見てください。

終わりに

方言は標準語に変換できない表現が多くて、なかなかに奥深い分野だと思います。実際この記事を書いてるときにも、相当の苦労を感じました。 未来大は意外と津軽出身の人が多いので、多少なりとも彼らがネイティブに使う言葉を聞いてみたいという人は是非お会いしましょう。

明日はBaHo猫さん。

参考